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「指定管理者制度」Q&A@

究極の自治体リストラ
公務の市場開放・外部委託化のツール

「公の施設」の管理に係る“指定管理者制度”とは何か

 2004年1月 神奈川県職員労働組合・神奈川自治体問題研究所 

 政府・総務省は、昨年6月に地方自治法の一部改正(9月施行)を行い、「公の施設」の管理・運営について、従来の管理委託制度に代わって指定管理者制度を導入し、これまで直営か政令等で定める公共的団体(以下「公的セクター」)に限定していたものを株式会社など民間事業者にもできるようにしました。
 これは地方独立行政法人制度や超法規的な構造改革「特区」と並ぶ“三位一体”の
自治体リストラ、公務の外部委託化(アウトソーシング)の究極のツール(道具)であり、小泉「構造改革」・新自由主義的な自治体政策の具体化です。現在、このことを契機に直営又は公的セクターに管理委託している「公の施設」の全面的な見直しが始まっています。県内でも既に横浜市や川崎市、藤沢市などで具体化されています。ここではこの制度の内容やねらい、問題点・課題を解説します。

Q まず「公の施設」とは何ですか

A 地方自治法で「住民の福祉を増進する目的をもって、その利用に供するための施設」とされており、県や市町村が住民のためにさまざまなサービスを提供するための施設です。
 例えば保育所や児童館、体育館、図書館、市民会館、福祉施設、病院など私たちの身近にある公的施設です。試験研究機関や公営競輪場、競馬場などは対象になりません。

 Q 「公の施設」の管理はどこが行っていたのですか

A これまで「公の施設」の管理は、上記のような施設の目的と性格をふまえて、自治体が直接管理・運営するか、又は@自治体が50%以上出資する法人、A公共団体(土地改良区など)、B公共的団体(農協、生協、自治会など)が行い、株式会社など民間事業所には委託できませんでした。

 Q 今度の地方自治法の一部改正で何が変わったのですか

A これまでの管理委託制度を廃止し指定管理者制度を導入しました。この制度は「公の施設」を管理・運営する主体に特段の制約を設けず、議会で指定管理者として議決されれば民間事業者もできるようにしたことです。 これは企業にビジネスチャンスを供する規制緩和、公務の市場開放の一環です。

 Q 管理委託制度と指定管理者制度はどこが違うのですか

A 管理委託制度は、受託者である公的セクターが設置者である自治体との契約にもとづいて「公の施設」の管理に係る具体的な事務事業を行うもので、当該施設の管理権限及び責任は自治体が有しており、利用許可(行政処分)などは委託できませんでした。
 指定管理者制度は、「公の施設」の管理に関する権限を指定管理者に委任(代行)して行わせるもので、従来の管理委託の範囲に加えて指定管理者は利用許可もできます。また、一定の範囲で料金設定もできます。指定手続や管理基準、業務の範囲など必要な事項は条例で定めるため契約は結びませんが、具体的、詳細なことは協定を締結します。

  現在直営で行っているか、新たに設置される「公の施設」の場合はどうなるのですか

A 引き続き直営とするのか、新たに管理代行を行うのかは自治体の判断です。指定管理者に管理を委ねる場合は、開設にあわせて直ちに指定手続きの作業が行われます。
 指定に向けては条例の制定又は一部改正、指定管理者の議決と2回の議会を経ることが必要であり、来年4月に開設又は新たに管理代行を行う直営施設は、今年の9月議会で条例を制定し、選定基準を作成、指定管理者の公募・選定を行い、来年2〜3月議会で指定管理者を議決、協定を締結して4月以降からスタートとなります。

 Q この指定管理者制度は、いつからどのような形で始まるのですか

A この法律改正は03年9月に施行されました。現に管理委託を行っている「公の施設」の場合は、3年間(経過措置)の間に自治体が現在の法人等も含めて指定管理者を決めます。
 指定基準づくりや住民の平等利用、コスト削減、人的・物的能力の視点から検討が行われます。しかし3年の猶予があるという構えでは運動が遅れます。神奈川県は昨年10月に部局担当者を集めて説明会を開き、05年4月から指定管理者制度に移行することを目標に、@基本方針(案)の提示と意見集約、A見込調査の実施、B03年10月以降の想定作業工程を提示し、検討を指示しています。

年 度 期間区分 作 業 内 容

*115年度
(*
15〜16年度)

 

下半期  ○制度導入にあたっての基本方針(案)の提示、施設ごとに導入可能性等の検討開始、各部局調査・ヒアリングの実施、施設ごとに条例改正にむけた検討開始
○個人情報保護条例など制度導入にむけて必要項目の検討開始
選定の基準や手続きの検討
○現行委託先等の関係団体と協議、調整(各部局)
16年度
*17年度) 
上半期

下半期
○施設ごとに制度への移行方法・条例改正(案)の策定
○17年度当初予算の概算積算
○9月県議会で条例改正、指定手続き等の明記
○指定管理者の選定(希望団体から事業計画書等の提出)

○12月県議会で指定管理者の議決、
協定締結
○2月県議会で予算決定
17年度
18年度)
上半期  ○指定管理者制度へ移行

*施行後3年以内の期限一杯で移行する場合は、準備期間が1年間長くなる。

  この制度は「公の施設」の本来の目的や性格、自治体の公的責任を後退させることになりませんか

A この制度は、総務省通知にも「事業計画書の内容が、施設の効用を最大限に発揮するとともに管理経費の縮減が図られるものであること」と明記されているように、経費節減と効率性に重点が置かれています。
 利潤を追求することを旨とする株式会社に「公の施設」の管理・運営を委ねていくことは、住民の諸権利の保障や自治体の公的責任の後退につながると懸念されています。

 Q 施設の利用料やサービスはどうなりますか

A 「公の施設」の利用料は、設置の主旨からして安価、低廉であることが必要です。この制度では、指定管理者は利用許可ができます。利用料も、あらかじめ金額の範囲、算定方法など基本的なことは条例で定め、設置者である自治体の承認を受けますが、指定管理者が決められます。そこには「経営努力」「成功報酬」という名による利潤の確保も想定されており、職員の非常勤・パート化、低賃金なども懸念されています。
 サービスの質、継続性、安定性、専門性の担保などの面からも検証が必要です。

 Q 地方自治法の「改正」があっても個別法の規制は有効であり、第1種社会福祉事業は株式会社などに委託できないと聞いますがそうでしょうか

A 当初、私達も、自治体もそう解釈していましたが、厚生労働省は、昨年8月に4課長連名通知を出し、今回の指定管理者制度の導入で特別養護老人ホームなど第1種社会福祉事業も株式会社に管理を委ねることができるとの見解を出しました。内閣府も「現状でも可能」としています。
 これは社会福祉法第60条「第1種社会福祉事業は、国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則とする」の規定に反する重大な変更です。今後、厚生労働省・内閣府にはその見解の撤回を求め、各自治体には社会福祉法第60条の趣旨に沿って運用するよう申し入れていきます。

 Q 公立学校や社会教育施設についてはどうなるのでしょうか

 学校は、総務省通知でも「学校教育法など個別の法律において公の施設の管理主体が限定されている場合には…できない」としていますが、内閣府は教育特区での実施を検討しており注意が必要です。
 また、図書館や博物館、公民館などの社会教育施設の管理は、これまで民間事業者には包括的な委託はできませんでしたが、内閣府は「指定管理者制度が導入されたことを受けて、今後、館長業務を含めた全面的な民間委託が可能であることを明確に周知する」(平成15年11月・行政サービスの民間開放等に係る論点)との見解と対応を明らかにしており、予断を許しません。

  利用者・住民参加、監査はどうなりますか

A 「公の施設」の運営への利用者・住民参加、住民監査請求など住民によるチェックシステムは確立していません。指定管理者が行う管理業務に係る出納関連は監査を行うことができるとされていますが、管理業務そのものは監査の対象になりません。
 また、指定管理者が管理を通じて得た個人情報の保護についても制度上の義務付けはありません。各自治体での独自の条例化や指定管理者との協定への明文化が求められます。指定管理者には、毎年度終了後に事業報告書(管理業務の実施状況、利用状況、料金収入実績など)の提出が義務付けられていますが、議会への報告義務はありません。
 また、兼業禁止規定が適用されず、設置者(首長)や議員、その親族が経営する民間等事業者が排除されないことから腐敗・不正の温床になる可能性も危倶されており、歯止めが必要です。

  いま、なぜこのような制度が導入されたのですか

A それは現在の行き詰まった日本の経済を打開するため、経済のグローバル(国際)化、市場化の中で多国籍企業の競争力を強化するために公共投資のあり方を転換し、膨大な財政赤字(国・地方合わせて693兆円・国民1人あたり550万円)を背景にして「小さな政府、小さな自治体」づくりを進め、自己責任・自立自助を基本にした社会システムに変えていくためです。
 そのため住民の暮らしを支え、福祉を増進させていくという自治体本来の機能を徹底して民間化・外部委託化していくものです。指定管理者制度や
地方独立法人制度、経済特区などは、こうした小泉「構造改革」の自治体版で、財界の求めに応じて何十兆円とも言われる公務の市場開放を促進し、ビジネスチャンスに転化するものです。

  この制度は地方独立行政法人制度とも関連しているのですか

A 地方独立行政法人制度は、指定管理者制度とは対象となる施設や制度内容に違いはありますが、同じねらいをもって制度化されたものであり、究極の自治体リストラ、公務の外部委託化(アウトソーシング)の切札であることには変わりありません。
 総務省も「地方独立行政法人法等の公布について」の通知の中で、あえて「公の施設の指定管理者制度の活用等と比較検討し」と述べ、どちらの手法がより適切か、よく検討して具体化をはかるよう指示しています。

  この制度の導入でそこに働く労働者の雇用や労働条件はどうなりますか

A 直営施設の管理が公的セクターに委ねられる場合は、当該職員は他の部署に異動するか、又は派遣法・条例にもとづいてその職場に派遣されます。民間事業者の場合は、派遣に係る法制度はないので原則他の部署に異動になりますが、反動的な自治体では退職強要・当該民間事業所への再就職や分限免職の攻撃も考えられ注意が必要です。
 問題は公的セクターで働く労働者です。そこの団体が引き続き当該施設の管理を受けられない場合、当該団体の中で雇用を吸収できなければ、退職・新たな管理団体への再就職や解雇につながるおそれもあります。指定管理者の選定は公募方式が原則になっており、この問題は現実化します。安易な競争原理は適用させず、自治体当局にこれまでの実績や専門性、技術力、人材などをきちんと評価させ、特に重大な瑕疵や問題がない限りは継続させていく運動が必要です。
 また、公務公共労働者を民主的な労働組合に組織化していくことは焦眉の課題です。なお、現在、公的セクターに委託している事業について、この制度の導入検討の中でそれを自治体直営に戻すことも理論的には可能です。
 

Q 施設の性質等から特段の必要性が認められる場合は、他の地方公共団体や市民活動団体などを指定管理者の対象として条例上限定することは可能か。また、従来からある施設を公共的団体等への委託により管理を行っていた場合、引き続き当該団体を指定管理者として指定(複数の者から申講させて選定させるのではなく1名を指定)することは可能か」「公募したが応募がなかった、応募者はあったが選考の結果ふさわしい者がない場合を想定して直営も可能と条例規定するべきか」(神奈川県)

 「条例で入り口から制限するのは、指定管理者を広く民間事業者を含めて可能とした法律の趣旨に反することになり、法律上は可能だが望まし<はない。むしろ選定の基準等で絞っていくべきである。
 また、これまで管理委託を行ってきた団体を指定するためには、地方公共団体の長は、継続して当該団体が管理を行うことが望ましい理由をきちんと説明する必要がある」「条例での指定管理者に関する条項を『行わせるものとする』などの柔らかい表現にしておくことが望ましい」(総務省)

 Q この制度の導入で民間事業者の動きはどうなっていますか

A この制度の導入は、先程も述べたように、財界の求めに応じて何十兆円とも言われる公務の市場開放を促進し、民間事業者にビジネスチャンスを与えるものです。既にこの制度の施行にあわせて自治体部門を設け、専任の担当者を置いて積極的に活動している企業もあります。
 労働組合にも「問題は雇用なのか、賃金なのか、身分なのか」と照会してきており、このチャンスに事業拡大をめざして「職員(特に専門職)含めて丸ごといただきたい」と述べている企業もあります。なぜ「公の施設」ななのか、そのことが真正面から問われています。

 Q 今後どのように取り組んでいくのですか

A 「公の施設」は、今日の経済社会のさまざまな矛盾を解決するために、自治体がより積極的に関わっていくことの必要性から設置されたもので「住民の福祉を増進するため」のものです。

いま住民の置かれている困難な状況とその中で「公の施設」が果たしている意義と役割、その公共性と住民の利用権の担保などに確信をもち、具体の検証を行い、利用者との共同・合意形成を強めて安易な市場開放を許さない取り組みが必要です。 同時に、「公の施設」に求められる期待や要求に的確に応え、それに相応しい実績と専門性、サービスの質、継続性、安定性を確保していくことが必要です。この観点から仕事を真摯に見直していくことが求められます。
 また、こうした運動と並行して、自治体当局の動きを踏まえた的確な対置政策・要求を出していくことが必要です。当面の重点は条例づくりです。「ぎょうせい」などが発表している条例試案や先行事例(横浜市など)の分析、独自の研究・検討を踏まえて、条例や指定管理者との協定に盛り込むべき事
項を早急に作成することです。
  
対案の基本は、
@実績、専門性、サービスの質、継続性、安定性などを明確に位置づけさせること、
A職員の身分、賃金・労働条件などが安定的に確保されること、
B指定管理者として相応しい者がいない場合は直営で行えるような規定を設けさせること、
C施設運営への利用者・住民参加の仕組み、管理運営のチェックシステムを設定させること、
D既存の個人情報保護条例の改正、協定への明確化をはかること、
E首長や議員、その関係者、特定団体等が経営する会社の規制をさせること、
F利用料の範囲、算定方法、上限の適正化、減免規定の設定などです。

  Q それでは政府の動きはどうなっていますか

 政府・経済財政諮問会議は、昨年10月の閣議決定で小泉首相を本部長とする地域再生本部を設置し、公務を民間に開放する上での規制や制限を取り払い、それを全面的に推進していく一括法を今年度の通常国会に提出するよう準備しています。
 具体的な中身は、
@道路、河川、公園など公共施設の管理を国などに限定した「公物管理」の抜本的な見直し、
A個別法が行政サービスの実施を自治体や公務員に限定していることが多い現行の体制を見直し、窓口事務の民間委託を促進する、
B水道・下水道・ガス事業、一部医療機関など全国に約13000ある地方公営企業の民営化
 などを想定しています。これはまさに特定分野(許認可・規制など)以外は丸ごと市場開放、民営化・民間委託していくという究極の自治体リストラ、公務の外部委託化の徹底といえます。自治体労働者だけでなく、利用者・住民、公務公共労働者、学者・研究者が一緒になって、こうした地方自治や自治体のあり方、公務そのものを変質・解体する攻撃に立ち向かっていくことが求められています。後世に禍根を残さないよう取り組みを強めていきましょう
(続く)

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